統計的推測理論の観点よりMI法の理論的背景や必要な仮定、利用上の注意点などを解説します
本セミナーは、2024年7月23日に開催したアーカイブセミナーです。
臨床研究や疫学研究を行う際、一部の対象者で解析に必要な変数が欠測することは避けられない課題です。例えば、請求情報データなどの大規模医療情報データを用いる場合に、血清クレアチニン値や、ヘモグロビンA1cなどの検査値が全員で取得されていないことは一般的です。
多くの医学研究ではこのような欠測データ問題に対し、多重補完(multiple imputation, MI) 法が用いられています。これは、欠損値に対して同時分布に基づき複数回の補完後興味のある推定を行い、それらを統合して一つの推定値を求める方法です。
MI法は多くの統計ソフトウェアで容易に実行でき、欠測のない完全データに対する解析手法をそのまま用いられることから、非常に実用的な手法ですが、その理論的な背景や、その長所・限界などの特徴が十分に理解されないまま漫然と使用されています。
本セミナーでは、欠測データ問題に対する統計的推測理論の観点よりMI法の理論的背景や必要な仮定、利用上の注意点などを概説します。具体的には、
などについて解説を行う予定です。
また、その特徴からMIはすべての欠測データ問題に対して万能ではなく、他の手法を用いることが適切な状況があります。
本セミナーでは、その代替手法として、逆欠測確率重み付け(inverse probability of missing weighting, IPMW) 法および二重ロバスト法を紹介し、その特徴や実装法を紹介します。二重ロバスト法はMI法とIPMW法を組み合わせた手法であり、MI法における補完モデルとIPMW法における欠測モデルのいずれかが正しければ一致推定が可能となる有用な手法です。
講義後には、仮想的な欠測データを用い、Rを利用したMI法、IPMW法および二重ロバスト法の実行例をお示しします。
統計的推測理論に基づいて欠測データ解析を解説した日本語の書籍がほとんどなく、その点でも本セミナーは非常に有用と考えます。
竹内 由則(横浜市立大学 准教授)
所属:横浜市立大学学術院(国際総合科学群)データサイエンス学部 データサイエンス学科 准教授
学位:博士(獣医学)(東京大学)
[経歴]
2024年1月 - 現在:国立国際医療研究センター, 臨床研究センター データサイエンス部 臨床疫学研究室, 客員研究員
2023年4月 - 現在:東京大学大学院情報学環, 生物統計情報コース, 非常勤講師
2023年4月 - 現在:横浜市立大学 学術院(国際総合科学群), データサイエンス学部 データサイエンス学科, 准教授
[最近の論文]
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